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高森明勅
2020.11.14 06:00皇室

「天皇反対」と書いた社員の涙

皇宮護衛官として皇宮警察学校副校長、赤坂護衛署署長などを
歴任された故・亀井孝之氏。

昭和51年11月に国民文化研究会の東京地区浦富合宿で講話をされた。
その記録から(『国民同胞』令和2年11月号)。

「最近聞いた話で、陛下(昭和天皇―引用者)のお人柄が
よく現れてゐると思ふ話があります。
昭和40年頃に、陛下がある会社に行幸(ぎょうこう)された時のことです。

会社では、事前にきれいに掃除したのですが、その朝になって、
陛下がお乗りになる予定のエレベーターにペンキで天皇反対といふ
落書きがされてあるのが発見されて、大急ぎで塗り替へが
行はれたさうです。

陛下がお着きになって、職場をご視察になった際、
ある社員に大事な仕事だからしっかりやってくださいと
お声をかけられたところ、その社員は泣き出したといふのです。
後で、同僚が尋ねたところ、実は落書きしたのは自分だ、
お声をかけられた時何故だか分らぬが泣き出してしまった、
と言って、その日限りでその社員は、(反天皇を唱える―引用者)
労組を脱退してしまったさうです。

この話を聞きますとわづか一言、二言、お声をかけられる中に、
その人柄がにじみでる、陛下はさういうご人格の方だと感じます。
また、誰もその社員が落書きしたといふことを知らないのに、
陛下は偶々(たまたま)お声をかけられたわけです。

古い言葉では御稜威(みいつ)と言ひますが、
私は天皇のご威徳(いとく)といふもので、
自然にさうなったのではないかと感じます」

不思議な偶然ながら(それとも、昭和天皇はその社員の
佇(たたず)まいに、何らかの“淀(よど)み”を
見抜いておられたのか)、その社員が泣き出したのは、
素直に納得できる気がする。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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